「銃・病原菌・鉄 下巻」を読んだ

上巻の感想

 上巻に引き続き,世界のいろいろなところで,なぜそのように文化が形成されたか,他との違い,遅れが生まれたのはなぜかについて考察を進めている. 具体的には,使用されている文字の広がり方,発明の広がり方,発展の仕方や部族社会から国家へという社会の大きくなる過程などについて,アフリカ・オーストラリア・ニューギニア・中国,そして太平洋の島々と,世界中に渡り考察する.

 著者の結論としては,これらの違いが生まれるのはひとえに環境の違いである,と述べる.環境というのは,気候,家畜・栽培化可能な動植物の存在,病原菌,また周辺文化との距離など.

 最後に,上巻の一番初めで提起した旧世界と新世界でなぜ格差が生まれたか,という問題について,環境が恵まれていたからだ,と結論づける.

 歴史というものに対して,様々な分野を横断的に移動しながら説明を行っていてとても勉強になった. マクロな視点で見ると,技術や文化に違いが見られる理由として環境があげられるのは考えてみれば当然な気がしないでもないが,それを理論的に説明しているのはすごいと思った.

 余談だが,日本人は漢字を使うことで大人であることを示す,みたいな記述があり,他にもいくつか日本について言及されている部分もあったが,それ本当か?みたいなことを感じることもあり,そこだけちょっと不安になった. 著者はニューギニアや東南アジア周辺については実際にフィールドワークに行っていたりしてかなり詳しいようだが,それ以外の地域についてはどうなんだろうとか思ったり.

 まぁ,歴史や文化というものを完璧に理解することなど不可能なので,これ一冊で満足するのではなく他の本も読んで勉強していきたい.